私の作品は、空間を撮影しプロジェクターで投影することで一瞬を何層も重ね合わせてイメージをつくり出しています。
例えば風景を撮影し、その画像を同じ場所にプロジェクターで投影し、再び同じ視点で撮影する、この行程を何度も繰り返し行います。そうして生まれた画像を、シルクスクリーンと絵の具を用いてキャンバスの上に刷り重ねていきます。
撮影とプロジェクションによって「現在の風景」に「わずかに過去の風景」が幾重にも重なっていきます。
現在の実像が、次の瞬間には、幾重もの過去の一つとなっていくのです。我々が生きるこの時間は“映画フィルムの連続するコマ”のような刹那の重なりで出来ていると私は考えます。
本展ではANAインターコンチネンタルホテルの客室で撮影とプロジェクションを行い、作品を制作しました。
客室には利用者の時間が流れ、次の日にはリセットされまた新たな利用者の時間が存在しています。
ホテルの客室というのは自宅の生活空間とは異なり、日々、そこを利用する人々が切り替わっていきます。閉ざされたプライベートな空間でありながら、それがあるタイミングで区切られ切り替わり、時間の移り変わりが断定される特殊な空間であるように思います。