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2018年6月20日 ~ 2018年9月17日
Art Platform TokyoとKoki Artsの共同企画で、糸目友禅染作家の石井亨と油画作家の牧田愛の二人展Shuttlecockが始まる。
石井亨は「現代における革新的な伝統工芸の価値を考察したい」という。
石井が敬愛してやまない浮世絵師たちは、市井の人々の生活を生き生きと表現したが、彼もまたサラリーマンの悲哀、震災、路上のゴミ等現代社会を、糸目友禅染という日本の伝統技術でポップに表現する。江戸初期の菱川師宣の傑作「見返り美人」は、当時の最先端のファッショニスタをアナログな方法で描いたが、石井はその「見返り美人」をベースに、ファッション雑誌のイメージをインターネットでコラージュして、デジタルに染め上げる。
牧田愛は「現代における崇高」を描きたいという。
先人たちは「崇高」を自然の中に見出そうとしたが、現代人は人間が作る技術自体に「崇高」を見出していると牧田はいう。牧田はその「現代的な崇高」のイメージの象徴として、人工的で均質的な肌触りがするプラスティックやクロムメッキをモチーフに油彩画を制作し続けている。無機的な素材を使って有機的な形を創造すること、また、キャンバス絵画というアナログな手法を用いてPC上のデジタルイメージを描くことで、人工と自然、過去と現在のイメージの対比を強調するような作品を彼女は作り続けている。
糸目友禅染と油画 — それぞれ手法は違うが、石井亨と牧田愛は、現代社会を正面から見据えて、要所要所で自分たちの立ち位置を確認ができる作家だ。彼らは、過去と現在、日本と海外、アナログとデジタル、伝統と革新と、対峙する世界を軽妙に行き来する。まるで羽根(shuttlecock)のように。