ARTISTS

竹村京

1975年
東京都生まれ
1998年
東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2000年
ポーラ芸術振興財団助成金
2000-03年
ドイツ学術振興会(DAAD 奨学生)
2002年
東京藝術大学美術研究科修士課程絵画専攻(油画)修了
2004年
ベルリン芸術大学(ローター・バウムガルテン研究室)卒業
2004-07年
文化庁芸術家在外研修員(ベルリン)
2008年
ベルリン市文部科学省助成金
2009年
吉野石膏美術振興財団

主な個展

2021年
Floating on the River」京都近代美術館 (京都)
2019年
「Madeleine. V, Olympic, and my Garden」タカ・イシイギャラリー(東京)
2018年
「どの瞬間が一番ワクワクする?」ポーラ美術館 アトリウムギャラリー(神奈川)
2017年
「Which Second Was the Most Beautiful?」「Which Year was the Most Beautiful?」ギャラリー・エベンスペルガー(ベルリン)
2016年
「なんか空から降ってくるよ」タカ・イシイギャラリー(東京)
2012年
「見知らぬあなたへ」タカ・イシイギャラリー(東京)
「Kei Takemura」インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート(シンガポール)

主なグループ展

2021年
「DOMANI・明日、スペースが生まれる」国立新美術館(東京)
「Omoshirogara」DKM美術館(デュイスブルク)
2020年
「ヨコハマトリエンナーレ2020」横浜美術館(横浜)
「鬼頭健吾×竹村京 Go back and fetch me out that doodle-do!」PHILLIPS (東京)
2019年
「長島有里枝×竹村京 まえ と いま」群馬県立近代美術館 (群馬)
2014年
「記憶のイメージ/イメージの記憶」BankART Studio NYK 2F ギャラリーA・B (神奈川)
「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」月出工舎(千葉)
「Now Japan―Exhibition with 37 contemporary Japanese artists」Kunsthal KAdE (Amersfoort, オランダ)

主な出版物

2019年
『長島有里枝×竹村京 まえ と いま』
2017年
『PLAYING CARDS』
2012年
『Prosaic Verse』

パブリックコレクション

Technik Museum(ベルリン)

愛知県美術館

高橋コレクション

豊田市美術館

群馬近代美術館

光る糸

絵具の代わりに糸を使い始めたのは、大学生の時だった。カドミニウム・レッドが好きだったが、筆を洗う時、「カドミニウム」と名のつくものを排水溝に流すことにためらいを感じていた。カンヴァスに筆で油絵具を置けば二つは離れなくなってしまう。ところが、糸は抜いてしまえば元どおりだ。無からかたちを生み出すという一般的な芸術家のイメージとは対照的に、作品をつくるとは「何かを移動させるだけ」と考えていた竹村にとって、カンヴァスと糸との付かず離れずの距離感がしっくりきた。

初めは身近にあった綿糸で試していたが、ほどなく絹糸を使い始める。きっかけは、奈良の中宮寺に伝わる天寿国繡帳との出会いだった。七世紀に作られたこの刺繍の糸は、千年以上を経て今なお鮮やかな色を放っていた。「仮縫い」という言葉に示されるように一時的な素材という意識で見ていた糸が、絵画よりも長い時間に耐えていることに衝撃を受けた。絹糸はその後ずっと使い続ける重要な素材となった。

壊れた物を歓待する

今夏、横浜で開催されるヨコハマトリエンナーレのテーマは「光の破片をつかまえる」である。芸術監督を務めるインドのアーティスト・グループ、ラクス・メディア・コレクティブは、昨年東京で、光る絹糸を使った竹村の作品を見て出品を決めた。竹村の作品が、まさにテーマを象徴すると考えたからだった。

会場となる横浜美術館の暗い展示室で、水族館の水槽のようにガラスケースが光っている。その中に、欠けたグラスやひび割れたカップ、動かなくなった時計、壊れたおもちゃなど、様々な日用品が並ぶ。ひとつ一つ、透ける紗のような薄い布で包まれている。布にはわずかに糸が縫い付けられており、糸の部分がぼんやりと青白く光る。光っている場所が割れたり、壊れたりしている箇所だ。ひび割れたところには線状に、欠けて失われたところは埋め合わせるように糸が縫い付けられている。

壊れて捨てられるはずだった物は、竹村の作品の一部として、もう少しの間、生き延びる。「修復シリーズ」という題名がつけられていることもあり、子供のズボンの穴を母親が糸で直すような「繕う」という気持ちがあるのかどうか、私は竹村に尋ねた。

縫うことは、女性性と結び付けられることも多い。実際、群馬の製糸業を支えたのも工場で働く女性たちであった。「繕う」というケアにも通ずる触覚的な行為が、女性によって担われてきたこともその理由であろう。

しかし、捨てられるはずだった物を自分が直したり、延命したりしている意識はないと竹村は言う。むしろ「歓待」という言葉が近いと答えた。たまたま自分のところにやってきた物を、招き入れ、もてなす。自分には自分の、物には物の時間が流れていて、その二つが出会ったような状態である。竹村と物との関係はドライで、一定の距離がある。

物に光を当てるという意味で、竹村の作品は、絵画よりも写真に近い。光る糸を縫い付けることは、写真に撮るために、照明を当てることに似ている。光によって見過ごされてしまう物の意味を引き出す。

けれども、いずれも物自体には一切加工を加えていない。たとえ惨状を伝えるジャーナリストであっても、写真家は直接、被写体を救うことはできない。竹村も、物の行く末を自分が変えられるという考えはおこがましいと思っているように感じられた。

物との微妙な距離感は、物とそれを包む薄く透ける布との間のわずかな隙間として作品に現れている。作家として手を加える階層と、あらかじめ世の中に存在した物という階層とを明確に分離し、決して交わらないようにすること。このけじめは、糸を使い始めた時に抱いていた、糸は抜いてしまえば、もとのカンヴァスに影響を与えないという感覚から一貫している。このわずかな隙間に、竹村の慎みが示されている。

十和田美術館館長 鷲田めるろ

WORKS

Playing Cards with Memorial Scene / Clubs 7 and Birthday Party

Playing Cards with Memorial Scene / Clubs 7 and Birthday Party

日本製絹糸、合成布、布地にカラープリント

1,150x1,000 mm

2017

880,000 円(税込) * フレーム無

展示場所 : 3F ⑫


Time Counter

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群馬産絹糸、蛍光絹糸、絹布

545x380 mm

2021

* SOLD

展示場所 : 2F ⑪


Time Counter

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群馬産絹糸、蛍光絹糸、絹布

460x365 mm

2021

* SOLD

展示場所 : 2F ⑥


Time Counter

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群馬産絹糸、蛍光絹糸、絹布

460x365 mm

2021

* SOLD

展示場所 : 2F ⑦

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